2003年8月29日、この日が何の日か知る人は少ない。

この日はオイラ達が遙か遠い道南地方へ“ヒメオオクワガタ”を求めて旅立った日である。

この物語はクワガタに魅せられたCRAZYな漢達
(おとこたち)のアツイ闘いの記録である…

同日夕刻、CRAZYな漢達は長い旅へと出発した。
北海道は広い。
オイラ達が住むのは道東地方。これから向かう道南地方までは想像を絶する距離である。
期待と不安が入り交じり、アクセルを踏む足にも思わず力が入る。

 オイラには哀しいかなヒメオオ採集経験はない。
 オイラの頭には先月の道北採集の記憶が脳裏をよぎる。
 行くからには“ボウズ”は避けたい。
 今回の旅には経験豊富な仲間達がついているが、彼等も昨年は玉砕したらしい…

  折しも天気は雨。明日の道南地方の天気予報は晴れである。
  しかし、当てにはならない。何せオイラは強烈な“雨男”である。
  なんとか“ヒメオオ”が捕れますよう、アラーの神に祈る…

高速をひた走ること数時間、やっと道南地方へ入る。
時刻はすでに深夜。そろそろムシ達もおやすみの時間である。
それでもCRAZYな漢達は灯火を見つけては立ち止まる。
ムシ好きの悲しい性(さが)なのか、その姿は炎に集まる蛾のようである。

 途中、「虫とあゆの町」にて、あてもなく“オオクワガタ”を求めて彷徨い歩く。
 採集報告のある“赤い橋”は見つからない…
 それでもミヤマ・ノコギリ・アカアシクワガタを数匹採集できた。

深夜2時過ぎ、ようやく目的地に到着。
 今夜は山の中のパーキングエリアで車中泊。
  辺りは真っ暗闇。車のライトを消すと、吸い込まれるような闇だ。
   天気は快晴。空には満天の星。
    最接近中の火星をはじめ、人工衛星・天の川もくっきり見える。
     こんなに星を見たのは何年ぶりだろう?
      明日(今日?)は目的のヒメオオがたくさん捕れますように、
       時折流れる流れ星に願いを込める。

夜が明けた。
天気も良く、絶好の採集日和だ!
7時過ぎ、目的の林道を探索。
この辺は“熊の巣”だ…襲われたらひとたまりもない。
車の中からルッキング。やっぱり簡単には見つからない。
やむなく車から降りて探索。
しばらくして…

「いたっ!」
遠くから声が聞こえる!
急いで近寄ると…

 本当だ!ヒメオオだ!!しかもペア!!!
 なんてことないブナの木の、それも細い枝にくっついている。
 こいつ等は気配を感じるとすぐに木から落ちてしまう。
 1人が網を差し出し、もう1人が上から棒で突く。
 「あっ!」メスが下に落っこちた!オスはなんとかGET!
 すぐに木の下を探すが、時すでに遅し。メスはどこかに行ってしまったとさ…

 1匹見つけたことで俄然やる気が出てきた!
 ここで採集方法を見直し、3人が歩いてルッキングし、
 オイラが車で後ろからガード(熊対策)することに。
 この作戦が功を奏したのか、その後続々と採集に成功!
 ヒメオオだけではなく、スジクワガタやコクワガタも採集できた。
 彼等はブナの木だけではなく、柳やサビタの木、タラの木等にも付いていた。
 どれも大木ではなく、比較的小さい木の細枝に付いている。
 その枝を囓り、樹液を出して吸っているようだ。

 中には1本の木に5匹も付いている“御神木”も見つかった。
 もちろん、オイラも自分で見つけて捕まえることができた。

とある朽ち木に珍妙なキノコが生えているのが目に止まった。
すると誰からともなく材割りに移行しだした。
そこで朽ち木の上を歩くオニクワガタを発見。
材割りの方は、何かの食痕はあるものの…

 道南地方はとにかく虫が濃い。
 道東地方では滅多に見られないものが平気でいたりする。
 アオカナブン・カミキリムシ・キノコムシ・アカエゾゼミetc…
 もちろん、人里離れた山奥だからかも知れないが。

正午を過ぎ、採集した数はヒメオオ♂13♀10、スジクワガタ9♂16♀、ノコギリクワガタ♂1♀3、
コクワガタ♂1♀2、ミヤマクワガタ♂2♀1、オニクワガタ♂1となった。

もう十分だろう。…ということでまた果てしない帰路についたのだった。
帰る途中、道央地方のとある町でラーメンを食べ、灯火採集するもミヤマ1♂にとどまる。
すでに疲れもピーク。急いで帰りましょう!道路もすいていてとても順調に(!?)帰ってきた。
同乗者の皆さん、あれはオイラの“普通の運転”ですよぉ!決してムキになってた訳ではありません(^_^;

今回は2日で1075Kmの旅となりました。
このような旅ができたのも、これだけの採集結果を出せたのも全て“CRAZYな漢達”がいたからこそでしょう!
いい歳ぶっこいたオヤジ達が、必至になって虫取網を振り回し、駆けずり回る姿はサイコーにカッコ良かったゼ!!
君たちの勇姿は永遠に北の大地に刻まれることだろう。
豊かな自然と、すばらしい仲間達にあらためて「ありがとう!」
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